依頼の場合の
刑事告訴や被害届の
受理及びその後の流れ

  
これまでのお話をおさらいしますと弁護士が依頼を受けてからは以下のように進みます。

 1:相談者から法律事務所への電話やメール問合せ
 (1)弁護士は相談に進むことが適切かを判断(虚偽や被害妄想事案の恐れがないか)
 (2)資料の準備依頼
 (3)来所相談またはオンラインによる面談相談日程の調整

 2:法律相談
 ※相談料については後述します。
 ・30分で完了するケースは少ないです。1時間は要します。
 ・関係者の説明,事実経過の時系列化した資料があると相談が円滑に進みます。
 ・現状の把握
 ・相談者の希望の把握
 ・民事事件の進捗状況の把握
 ・告訴や被害届の受理の見通しの検討
 ・依頼する場合の見通しや費用の説明

 3:依頼
 依頼の条件は後述します。

 4:必要な資料の作成,準備,弁護士に資料の提供
 ・性犯罪特有
  心理的抗拒不能型の性犯罪(不同意わいせつ,不同意性交など)は,加害者の欺し文句やそれを受けた被害者の当時の心境などを整理した時系列整理表の作成など
 ・詐欺
  複数被害の場合には,加害者の欺し文句やそれを受けた被害者の当時の心境などを整理した時系列整理表の作成など
 ・業務上横領
  横領行為複数の場合には犯罪事実一覧表の作成。いつ,どこで,どの口座からどの口座に送金され,あるいは現金で,そのときの資金移動者の被害者への説明内容,提供資料など

 5:弁護士が告訴状「案」を作成 
 ・業務上横領特有
  横領行為複数の場合の犯罪事実一覧表作成し添付

 6:弁護士が所轄警察署の相談予約
  いきなり検察庁や都道府県警本部には行きません。所轄です。
 所轄⇒都道府県警本部⇒所轄というケースもありましたが,やはり最初は所轄です。

 7:所轄警察署で相談
  依頼者と弁護士が一緒に行きます。
案件説明,証拠の写真撮影まで進むこともあります。
警察が捜査を開始する方向で行くか行かないかの感触は分かります。
警察が資料を上司も含めて検討の上で捜査を開始する方向で行くか行かないかが決まる場合もあります。
大半は担当する捜査課の係長(階級は警部補級)が担当します。繁華街の忙しい警察署になると巡査部長級の対応もあります。

 ・性犯罪特有
被害者が女性の場合,女性の捜査員,係に女性捜査員がいない場合には他の課や係から臨時で呼んで立ち会ってくれることもあります
。 被害者が幼児や児童の場合,最初から被害にあった幼児や児童を連れて相談することはあまりなく,保護者から聞いて,事情聴取の際に,女性の捜査員に聴取をさせることがあります。

 8:警察の基礎的な捜査
 加害者の前科前歴の調査は割とすぐ行うがこちらには知らされないのが原則ですが,この情報は警察はすぐに調べる傾向があり,相談時の話の雰囲気で同種前科や同種余罪の有無などを感じ取れることがあります。
LINEのやりとりの提供,メールの写真撮影,手帳のコピー詐欺や横領の事案は,金の流れをまず追うので銀行口座の照会 性犯罪で被害後間もないときは防犯カメラ画像の取り付け,これは保存期間がかなり短いので時間勝負となります。

 9:被害者や被害者サイドの関係者の事情聴取と調書作成
 警察で調書を作ります。事情聴取は結構長いです。
性犯罪被害者はマネキンなどを使用し,警察署の道場などで被害の再現をし,写真撮影もします。
 ※事案によりこの段階で加害者側にも事情聴取をすることはあります。

 10:警察の検察官への事件相談
 警察は8,9あたりでは検察官に事件相談をしながら進めていることが多く,検察官の助言で重点的に聞くべきことが出てそれを再聴取したり追加で資料を探すよう指示がったりします。

 11:都道府県警本部の捜査員の加勢
 大きめの事件になると,8,9,10の段階で所轄単体の捜査から,都道府県警本部の捜査員が捜査に加わることがあります。
・性犯罪
 所轄の刑事課強行犯係の捜査であったのが,そこに都道府県警本部の捜査1課の捜査員が加わります。
・詐欺・業務上横領
 所轄の刑事課知能犯の捜査であったのが,そこに都道府県警本部の捜査2課の捜査員が加わります。

 12:告訴状の受理
 警察は,次に令状が必要な捜査(捜索差押え,逮捕)の手前で,告訴事実はこういう内容にして欲しい,複数あるうちの一部を落としいて欲しい,などとリクエストをしてくることが多く,告訴状案は,ここで告訴状になり,いよいよ日付と告訴代理人弁護士の印鑑を押し提出します。
添付する資料も,警察から指示がある場合が多いです。
ここで告訴が受理されます。
 繰り返しになりますが,ここまで被害者と警察と弁護士ではかなりの協力作業をこなしており,告訴受理はその成果です。
 告訴状は最初に完成体を持って受理してもらうのではないのです。
告訴受理は,最初被害者が弁護士に相談した際に述べていた多くの事実の中から,それまでの捜査の過程で,強制捜査の令状を請求しやすいあるいは公判請求して有罪に持ち込みやすい証拠が付いてくる明確な事実を磨き上げたという結果でもあります。
 ここまでが,告訴の依頼を受けた弁護士の受任業務であり,依頼事件は成功となります。
 この先は,告訴受理後の対応になります。

 13:加害者の逮捕
 逮捕されることもあればそうではないこともあります。
逮捕は,加害者が悪いことをしたから逮捕されるのではなく,逮捕の理由と必要性は別です。
 事件や結果が大きいから逮捕されるのではなく,それだけのことをして有罪になると刑務所に長いこと行かなくてはならないだろうからそれを恐れて証拠隠滅したり逃げたりする恐れがあるかという視点で判断します。
 被害者に対する報復やデータの消去や共犯者との口裏合わせなどの証拠隠滅行為をするリスクがどのくらいあるか,であるとか,加害者が逃げてしまうような環境や危険性がどの程度がという判断です。
 そこまでの恐れがなければ逮捕はされませんが,被疑者であることには変わりありません。
 加害者の逮捕の有無で一喜一憂することはあまり望ましいことではありません。

 14:加害者の弁護人からの連絡
 加害者が逮捕されるとほぼ弁護人が選任されます。
逮捕されていない加害者も多くが弁護人を選任するはずです。
加害者の弁護人は,示談交渉を試みることが多いです。
加害者の弁護人は,被害者に連絡を試みますが,加害者が送検されている事案では被害者の連絡先を知っていてもその情報から被害者に直接連絡してくることは希であり,検察官を通して被害者の示談交渉に関する意向を確認してから連絡をしてくる 被害者に告訴代理人がいれば,検察官は告訴代理人に連絡して示談交渉の意向を確認してから加害者の弁護人に告訴代理人へ連絡するよう伝えます。

 15:示談交渉
 するかしないかは被害者の意向次第です。
しなくても構いません。処罰を求めるということでやってきた手続なので初心貫徹でそのまま進むのも良いです。

 【示談するとどうなるか】  起訴前の場合,加害者を許し刑事処分を求めないという内容が入ると加害者は起訴猶予を理由とする不起訴になるでしょう。加害者の弁護人はこの結果を求めます。逮捕勾留された加害者は早めに釈放される可能性が高いです。
 起訴後の場合,起訴がなかったことにはなりません。加害者が有罪になるがその刑が大きく軽減されるという結果になるでしょう。公判中に勾留されている加害者は保釈が認められやすくなるでしょう。

 16:加害者の起訴
 ここまで捜査をしてきた結果,加害者を起訴できる証拠があり,起訴すべきだとなれば検察官は起訴します。
起訴には大きく分けて「公判請求」と「略式請求」がありますが,後者は罰金で終わります。

 17:加害者の不起訴
 ここまで捜査をしてきた結果,加害者を起訴できる証拠が十分ではないとなると,検察官は不起訴にします。
 検察官が不起訴にするような場合には,送検後に検察官から証拠の弱いところの指摘などがあり,この事案では起訴までは難しいという感触が得られているものです。そういった場合では少しでも賠償を得て示談交渉をするのが望ましいこともあります。いきなり不起訴になりましたという事案はまずないです。
   不起訴処分に納得がいかない場合には検察審査会への申立をするかどうか検討しましょう。

 18:加害者の公判請求による起訴後の立証活動
 加害者が事実を認めていない場合に,補充捜査が必要になって,追加で事情聴取があることもあります。
 加害者が事実を認めていない場合に被害者が証人尋問を受けることもありますが,検察官がうまくコミュニケーションを取り,不安感がないように配慮して進めてくれます。
 被害者が住所や氏名を特定されないようにする措置,加害者と顔を合わせないで済むようにする措置,加害者と同じ法廷にいないで済む措置,傍聴人に姿を見られないようにする措置など,被害者を保護する措置は多く存在します。

 19:被害者参加
 一定の性犯罪では,被害者参加制度を活用できます。
 とくに,告訴代理人を被害者参加弁護士に選任することで,この制度の利用が円滑にできます。この被害者参加弁護士になった告訴人代理人は,この事件のことをそれまでの経緯があり特によく知っていますので加害者に公判で厳しい質問をするなど,よく立ち向かってくれる面があります。

 20:判決
 こうして1審判決が出ます。
もしも無罪判決の場合,検察官が控訴するかを判断する期間に,告訴人代理人が被害者の意向を検察官に伝えるなどの活動ができます。

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